院長コラム
Vol.04 「イタリア文化紀行」
アルプス南山麓に、風光明媚な三大湖としてコモ湖、マジョーレ湖、ガルダ湖がありますが、今回の第5回Ferring International Pediatric Endocrinology Symposiumは、その中のマジョーレ湖の畔のバヴェーノで開かれました。私はSymposiumのSatellite Workshopで”Estrogen replacement therapy in Turner syndrome(内容は原著の項参照)”の発表をしました。ここでは、学術的なことはさておいて、今回のイタリア旅行での見聞きしたことを少し書き記したいと思います。
4月7日に成田を発ち、7日夜ミラノ泊。8日朝は曇り空でしたが、まず有名なドゥオモ(大聖堂)を訪れました。500年以上もかかって造られたイタリア最大のゴシック建設で、まずその大きさに驚かされます(写真1)。聖堂内は、美しいステンドグラスを通して入ってくる光だけで薄暗く、神父様に懺悔をしている人の姿が印象的でした。外を回ってエレベータで、屋上に上ることができます。135本もの尖塔には多数の彫像が刻まれ、中央の尖塔には「マドニーナ」と呼ばれる黄金のマリア像が輝いていました(写真2)。
ブレラ美術館のそばに、レストラン「ナブッコ」がありました。有名なヴェルディのオペラ「ナブッコ」から名前をとった店で、名前につられて昼食を摂るために入りました。店内は、「ナブッコ」をはじめ「蝶々夫人」「ラ・ボエーム」のスカラ座でのポスターが貼られており、私たちが昔合唱団で歌った「ナブッコ」の「行け、我が想いよ、黄金の翼にのって」の楽譜も飾られていました(写真3)。食事は前菜のアンチパスト・ナブッコはなかなかでしたが、スパゲティーはいまいちでした。
バヴェーノの3日間はほとんど雨に降られ寒くて、アルプスの山々も拝むことはできませんでした。それでも、ボッロメオ家が避暑用に作ったバロック建築の宮殿と庭園で有名な湖上のベッラ島まで、小さな船で渡りました。200室もある豪華な宮殿は、舞踏会用の大広間、ムッソリーニが第2次世界大戦前にイギリス、フランスの代表と会談した部屋、洞窟のような奇妙な部屋など、趣向を凝らした大広間が続きます。コンサートホールでは、案内のイタリア人に日本の歌を歌えといわれて、私が「千の風にのって」の一節を歌って、見物のイタリア人からも拍手をもらいました。庭園は素晴らしく、10以上のテラスが階段状に設計されて、美しい花や木が茂り、放し飼いの白孔雀が羽を広げていました(写真4)。
ここでの食事は、近くの小さなレストランで食べたリゾット、カラマリと、赤ワインが最高でした。
4月11日にミラノに戻り、予約していたサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会へ行って、「最後の晩餐」に2度目の対面をしました。1度目は、修復前の約25年前ですが、そのころはあまり感激しなかったと記憶しています。今回は、これまで多くのキリスト教の絵画を鑑賞したり、マタイ受難曲、ヨハネ受難曲を歌ったり、ダヴィンチ・コードを読んだりしていたので期待していましたが、期待どおりの素晴らしさでした。特にユダが一人浮いて見えたのには、驚きました。借りて聞いた日本語の音声ガイド(2.5ユーロ)は、隅々まで説明が行き届いておりお勧めです。
夜は待望のスカラ座(写真5)!ヴェルディの「マクベス」を、3階のバルコニー席で聴きました。シェークスピアのマクベスを原作にしたオペラで、オーケストラを日本の大野和士さんが指揮していました。1幕目は、ソロも合唱ももう一つでしたが、徐々に素晴らしい演奏が盛り上がっていきました。3幕目の長いダンスで少し眠かったですが、8時から12時までの長い時間、ソロの美しい声と声量、合唱の素晴らしさに酔いしれました。唯一、この日のために日本から持ってきたオペラグラスをホテルに忘れたのが、悔いが残りました。
12日は、列車でミラノからフィレンツェまで移動しました。ミラノ中央駅は、ムッソリーニが作らせたものですが、これまでも「ひまわり」など多くの映画で使われた有名な駅で、広いアーチ状の天井が印象的でした(写真6)。現地のツアーガイドの日本の方と駅に行き、一等車の席に座ろうとしていた時に、いつの間にか15~16歳のかわいい女の子が私の後にいて、私の鞄に手を掛けようとしていました。ガイドさんがすぐ気がついて咎めたためいなくなりましたが、ジプシーの女の子のスリだそうです。ミラノからフィレンツェまで約2時間45分ですが、ガイドさんが「日本と違って、予定時間通りには着きません」と言っていたとおり、予定時間より約5分遅れて到着。
フィレンツェでは、美術館めぐりをしました。ウフィッツイ美術館、サン・マルコ美術館、アカデミア美術館、パラティーナ美術館とまわり、教科書でみたようなポッティチェッリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラッファエッロなどの有名な作品が次から次と現れ、フレンツェ文化のすごさを感じました。
夜は、さすが日本料理が食べたくなり、日本料理店に行きました。ガイドブックに夜7時から開店とかいてあったので7時15分頃に行きましたが開いておらず、ドアを開けて訊くと、あと20分後に来いとのこと。イタリア人経営の日本料理店で、みそ汁をスプーンで飲んだのは、初めてでした(写真7)。
最後の日にフレンツェでしか売っていないというビスケットを買いに出かけました。ガイドブックでは、8時半から開いていると書いてありましたが、9時15分ごろに着いてみると、シャッターが閉まっています。横のドアから出てきた人に訊いたら、「チョット待て(英語で)」といって人を呼びに行き、出てきたのは店の主人。こちらへと奥に案内されたのは、店の裏にある工場(写真8)。そこで、いろいろのビスケットを試食させてもらい、おみやげに買いました。イタリア人が時間にルーズなのは聞いていましたが、日本では考えられないと実感した次第です。
芸術だけでなく、スリや時間のルーズさなど、いろいろ体験したイタリア旅行でした。
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