思春期・基礎知識
思春期に関連する身体的疾患
■性腺機能低下症
性腺機能低下症(Hypogonadism)は、視床下部-下垂体系の異常、または性腺(卵巣または精巣)の異常により、性ホルモンの分泌が不足になる状態を指します。
性腺機能低下症は、性ホルモンの不足によって思春期の発達が遅れる、さらに不妊や性機能障害を引き起こすことがあります。
[主な特徴と症状]
性腺機能低下症の症状は、年齢や性別、ホルモンの不足の程度によって異なります。主な症状には以下のようなものがあります。
- 思春期の発達遅延: 思春期の始まりが遅れる、または発達が不完全になる。
- 不妊: ゴナドトロピン、性ホルモンが正常でないため、挙児が難しくなる(男性では精子の生成不足、女性では排卵障害が原因となることがあります)。
- 性機能障害: 性欲の低下、勃起不全(男性)、月経不順や無月経(女性)などが見られることがあります。
- 身体的変化: 乳房発育不全、無月経。矮小陰茎、矮小精巣。男性では筋肉量の減少、体毛の減少、女性では乳房の発達不良、骨密度の低下が見られることがあります。
- 疲労感や気分の変動: ホルモンの不均衡が心理的な健康に影響を与えることがあります。
[原因]
性腺機能低下症の原因は、低ゴナドトロピン性(中枢性)と高ゴナドトロピン性(原発性)に分けられます。
低ゴナドトロピン性(中枢性)性腺機能低下症:
- ゴナドトロピン分泌不全: 多くは視床下部性で、種々の遺伝子異常が報告されています。Kallmann症候群は、無嗅症、低嗅症を伴うことで、特徴づけられています。
- 頭蓋内腫瘍:鞍上部腫瘍(頭蓋咽頭腫など)、下垂体腫瘍(プロラクチノーマなど)など。
- 複合下垂体ホルモン分泌不全症、成長ホルモン分泌不全症に伴うゴナドトロピン欠損症
原発性性腺機能低下症:
- ターナー症候群、クラインフェルター症候群などの染色体疾患が性腺機能低下症を引き起こすことがあります。
- 性腺機能不全:精巣無形成症や卵巣無形成症など。 がん治療に用いる放射線や抗がん剤が性腺にダメージを与えることがあります。
- 外傷や手術: 性腺への外傷や手術が原因となることがあります。
[診断]
性腺機能低下症の診断には、以下の検査や評価が行われます。
- 血液検査: ゴナドトロピン(LH,FSH)、性ホルモン(テストステロン、エストラジオール)のレベルを測定します。hCGテスト、LHRHテストを行う場合もあります。
- 画像検査: MRI、超音波やCTスキャンで、頭蓋内や性腺の状態を確認します。
- 染色体・遺伝子検査: 染色体や遺伝子異常による疾患が原因となっている可能性がある場合、染色体検査や遺伝子検査が行われることがあります。
[治療]
性腺機能低下症の治療は、原因や症状に応じて行われます。
- 男性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症: 原則的には、ゴナドトロピン(hCG療法とrFSH)補充療法を行います。
- 高ゴナドトロピン性性腺機能低下症:性ホルモン補充療法を行います。男性は、テストステロン(エナルモン・デポ)の注射。女性は、周期性エストロゲン・プロゲステロン療法。
[予後]
性腺機能低下症の予後は、原因や治療の効果によって異なります。適切な治療を受けることで、ホルモンのバランスを整え、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。多くは、長期的な管理と治療が必要となります。
2024/10/8
思春期は小児から成人への移行の過渡期にあたる時期で、種々の成熟段階を経て身体全体が成人に成熟します。