思春期

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 思春期の性成熟と成長

 思春期は小児から成人への移行の過渡期にあたる時期で、種々の成熟段階を経て身体全体が成人に成熟する。この過程は多くの神経内分泌因子やホルモンによって制御されているが、最終的には、下垂体から分泌されるゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)と性腺から分泌される性ステロイドホルモンが上昇して、二次性徴を発現・成熟させる。
 
 何が思春期開始の引き金になるかは、完全には明らかではないが、栄養や脂肪細胞から分泌されるレプチンなどが関与していると考えられている。
 

① 二次性徴の成熟

 
 思春期の発来は、男子においては精巣容量の増大から始まり、陰茎増大、陰毛発生と進んでいく。女子においては乳房の発達から始まり、陰毛発生,初経と進んでいく。思春期の評価は、Tannerが提唱したTanner段階が用いられ、男子においては、精巣の大きさ、陰茎の大きさ、陰毛の発毛状態が、女子においては乳房、陰毛の発毛状態が評価される1)。未だ思春期が始まらない時期をTanner 1度、成人の成熟状態をTanner 5度とし、思春期の開始(女子で乳房の発育開始、男子で精巣の4ml以上の増大)をTanner 2度として、評価する(図1(a)(b))1)。男子では、Orchidometer(精巣容量測定器)を用いて、精巣容量を測定する。精巣容量とTanner段階に関しては明確な規定はないが、筆者は4~8mlをTanner 2度、8~12 mlをTanner 3度、12~18 mlをTanner 4度、18 ml以上をTanner 5度としている。
 

 

② 思春期のホルモン

 
 このような思春期の発現・成熟は、間脳-下垂体-性腺の機能によって調節されている。視床下部にあるゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)の刺激により下垂体のゴナドトロピン(gonadotropin)である黄体形成ホルモン(luteinizing hormone:LH)と卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone:FSH)が分泌され、それらの刺激により性腺(男子:精巣、女子:卵巣)から男子では主にテストステロン、女子では主にエストラジオールが分泌されて、二次性徴が発現・成熟する(図2(a)(b))。
 

 
 視床下部からのGnRHは律動的に分泌されており、視床下部内側底部にパルスジェネレーターが存在すると考えられている。ゴナドトロピンもGnRHのパルス状分泌の刺激で、パルス状に分泌されている。超高感度ゴナドトロピン測定法により、前思春期にもパルス状の分泌がみられ、昼夜の差が認められることが明らかになってきた。その後思春期前期には、まず夜間のゴナドトロピンが上昇し、中期には昼間も上昇してきて、後期には昼間・夜間と大きなパルス状の分泌がみられる。
 

③ 思春期の成熟と成長


 思春期は、二次性徴の発現・成熟と共に、成長のスパートがみられる時期である。思春期の成長は、成長ホルモンの分泌も思春期に増大するため思春期の成長に関与しているが、主には性ホルモンの影響によるもので、当然二次性徴の発現・成熟と密接な関係がある。
 

 
 図3に女子の乳房成熟、ピーク成長率、初経年齢の累積頻度曲線を示した2)3)。Tanner 2度の平均年齢は9.74±1.09歳、平均身長は134.1±6.8cm、平均体重は29.5±4.3kgであった。このデータから思春期開始年齢の標準値(平均±2 SD)は、7歳7ヶ月~11歳11ヶ月と考えられた。ピーク成長率時の平均年齢は10.88±0.89歳、平均身長は142.4±5.7cm、平均体重は34.3±4.7kg、初経時の平均年齢は12.24±0.93歳、平均身長は151.4±6.0cm、平均体重は40.9±5.7kgであった。
 
 男子の精巣が約4mlに増大する平均年齢は 11歳6ヶ月前後、平均身長は約145 cmである4)。成長速度のピークは男子は約13歳で、その時の平均成長速度は約10cm/年にも達する。
図4は成長速度曲線と二次性徴の成熟と共に示した。 女子においては、思春期開始時には成長率がすでに上昇しており、1~2年の間に成長率のピークを迎える。初経は通常成長率のピークをすぎてからおこり、初経から成人身長までの伸びは、健常女子においては5~6cmである。健常女子においては思春期開始から成人身長までの伸びは約25cmだが、低身長女子では18~19cmである2) 5)。男子は思春期が開始したときは、まだ成長率は上昇していない。思春期開始後約1年半~2年で成長率のピークを迎える。声変わりは、成長率のピークを過ぎることに起こる。健常男子は、思春期開始から成人身長までの伸びは約30cmで、低身長男子では約25~26cmである5)。
 
 いままで述べた、思春期の成長は、あくまでも平均的な成長パターンで、個々の子どもの成長パターンは、個人差が大きいことを念頭においておかなければならない。
 

 

おわりに

 
 思春期は性の成熟の時期で、最終的に生殖機能を獲得・維持するようになるが、それと同時に成長の終了の時期でもある。成長が止まる、すなわち骨端線が閉鎖する機構には性ホルモンが関与している。子どもの思春期をみるときには、二次性徴の成熟と共に、成長を同時にみていく必要がある。