思春期・基礎知識
思春期に関連する身体的疾患
■思春期遅発症
思春期遅発症(Delayed Puberty)は、通常の年齢よりも遅れて思春期が始まる状態を指します。思春期の開始年齢は、女の子で12歳、男の子で13歳を過ぎても思春期の兆候が見られない場合が思春期遅発症と診断されます。
性腺機能低下症との鑑別が必要です。
[主な特徴]
- 女の子の場合: 12歳を過ぎても乳房の発達が見られない、または14歳過ぎても月経が開始しない場合。
- 男の子の場合: 13歳を過ぎても精巣の腫大が見られない場合。
[原因]
思春期遅発症の原因は多岐にわたり、一般的に以下のように分類されます。
生理的原因:
- 遺伝的要因: 家族に思春期の遅れがある場合、遺伝的な要因が関係していることがあります。
- 身長や体重: 成長が遅れている場合、身体の発達が遅れることがあります。
内分泌系の問題:
- ホルモン異常: 下垂体からのホルモン分泌が正常でない場合、思春期の開始が遅れることがあります。また甲状腺ホルモンや性ホルモンの分泌異常が原因となることがあります。
栄養や健康状態:
- 栄養不良: 食事が不十分である場合、成長や発達に影響を与えることがあります。
- 慢性疾患: 糖尿病や腎疾患など、慢性的な健康問題が影響を与えることがあります。
精神的要因:
- ストレスや心理的な問題: 精神的なストレスや不安が成長や発達に影響を与えることがあります。
[診断]
思春期遅発症の診断には、以下の検査や評価が行われます。
- 身体的評価: 身体的な成長や発達のパターンを観察します。
- ホルモン検査: 血液中のゴナドトロピン、性ホルモン、IGF-Iや甲状腺ホルモンのレベルを測定します。
- 画像検査: MRIや超音波などで内分泌腺や性腺の検査が必要な場合があります。
- 遺伝的検査: 染色体や遺伝子の異常があるかどうかを調べることがあります。
治療
思春期遅発症の治療は、原因に基づいて行われます。
- ホルモン療法: ホルモンの分泌が不足している場合、性ホルモンの補充療法が行われることがあります。男子の思春期遅発症には、蛋白同化ホルモン治療が有効です。
- 栄養管理: 栄養不良が原因である場合、栄養の改善が推奨されます。
- 心理的サポート: 精神的なストレスや心理的な問題がある場合、カウンセリングや心理療法が役立つことがあります。
[予後]
思春期遅発症は適切に治療することで、通常は正常な思春期の進行に戻ることが期待できます。治療が遅れると、身体的および心理的な発達に影響を与えることがあるため、早期の診断と治療が重要です。治療後は成長と発達を継続的に監視することが推奨されます。
2024/10/8
思春期は小児から成人への移行の過渡期にあたる時期で、種々の成熟段階を経て身体全体が成人に成熟します。