学術活動
No.37 「2022年成長ホルモン分泌不全性低身長症の成人身長調査」
2020年に、低身長外来研究会の施設で共同研究した結果が日本成長学会雑誌に掲載されました。
我が国の今までの報告の中でも一番良い成績で、特に男子の思春期の伸びを大きくする併用療法が、効果を上げています。
日本成長学会雑誌 30巻2号、51-63頁
成長ホルモン分泌不全性低身長症の成人身長:2022年調査
田中敏章、曽根田瞬、佐藤直子、岸健太郎、他.
抄録
低身長外来研究会では、成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)の成人身長の調査を過去2回行ってきたが、今回第3回目の後方視的な調査を行い、19施設より回収されたGHD 304名のデータを解析した。症例は男子170名(重症9名、中等症68名、軽症93名)、女子134名(重症10名、中等症49名、軽症75名)。GH治療開始時平均年齢は9.44±3.01歳、平均身長は118.3±16.3 cm、平均体重は23.6±8.4 kg、平均身長SDSは -2.58±0.50 SD、平均BMI SDSは-0.45±0.97 SD、平均IGF-I SDSは -1.74±1.04 SDだった。GH治療期間は、6.3±2.8年だった。
平均成人身長は、男子167.0±5.3 cm(-0.66±0.92 SD)、女子152.1±4.4 cm(-1.14±0.85 SD)だった。思春期における併用療法別の成人身長は、男子ではGH単独(N=61)164.5±5.3 cm、GH+蛋白同化ホルモン(AH: anabolic steroid hormone)(N=89)168.5±5.2 cm、GH+LHRHアナログ(LHRHa)(N=3)163.5±2.5 cm、GH+AH+LHRHa(N=17)168.2±5.5 cmで、GH+AHは、GH単独よりも有意に高かった(Bonferroni/Dunn p<0.0001)。思春期の伸びの平均はそれぞれ、25.6±5.7 cm、32.0±6.8cm、30.1±1.0 cm、36.3±6.2 cmで、GH+AHとGH+AH+LHRHaは、GH単独よりも有意に大きかった(Bonferroni/Dunn p<0.0001)。身長SDSの改善度は、それぞれ1.50±0.85 SD、2.05±0.83 SD、1.24±0.70 SD、1.99±0.88 SDで、GH+AHとGH+AH+LHRHaは、GH単独よりも有意に大きかった(Bonferroni/Dunn p<0.0001)。女子ではGH単独(N=117)152.3±4.3 cm、GH+LHRHa(N=17)151.0±4.8 cmと有意差はなかったが、思春期の伸びの平均はそれぞれ、17.7±4.6 cm、25.4±5.9cmとGH+LHRHaが有意に大きかった(Mann-Whiteney U検定 p<0.0001)。身長SDSの改善度は、それぞれ1.58±0.95 SD、1.33±0.84 SDと、有意差はなかった。
2012年、2018年の調査報告よりも平均成人身長が高くなっており、思春期の併用療法の割合が増えていた。