学術活動
No.18 「抄録 GHD&QOL 2014」
Effect of growth hormone treatment on quality of life in Japanese children with growth hormone deficiency: An analysis from a prospective observational study
Toshiaki Tanaka, Tomonobu Hasegawa, Keiichi Ozono, Hiroyuki Tanaka, Susumu Yokoya, Kazuo Chihara, Noriyuki Iwamoto, Yoshiki Seino
Clinical Pediatric Endocrinology 23:83-92,2014
成長ホルモン分泌不全性低身長症小児における成長ホルモン治療のQuality of Life(生活の質)に対する効果:後方視的観察研究の解析
田中敏章、長谷川奉延、大薗恵一、田中弘之、横谷 進、千原和夫、岩本紀之、清野佳紀
【目的】
低身長小児のQOL評価は欧米では長年に渡り研究されているが、わが国では十分に検討されていない。そこで我々は、Child Behavior Checklist (CBCL)とYouth Self Report (YSR)を使いGHD及びISS小児のQOL検討を行った。
【方法】
GHD小児(GHD群)152例とISS小児(ISS群)129例を対象としCBCL及びYSRを使用しQOLの経時的変化を評価した。なお、GHD群の症例は、調査期間中GH治療を受けている。CBCLは親が評価する質問票でYSRは子供自身が評価する質問票であり、CBCL、YSR共にスコアが大きい程QOLが悪い事を意味する。
【結果】
調査開始時において、CBCLでは内向尺度(p<0.05)・外向尺度(p<0.05)でGHD群に比しISS群が高いQOLスコアを示した。YSRでは外向尺度(p<0.01)でGHD群に比しISS群が高いQOLスコアを示した。12ヵ月後のCBCL、YSRのスコアの変化量において、CBCLでは両群ともに有意なスコアの減少を示したが、YSRではGHD群のみ有意なスコアの減少を認めた(総得点・内向尺度でp<0.001)。CBCL、YSRのスコアの変化量と身長SDSの変化量の相関について検討したところ、CBCLではGHD群、ISS群ともに身長SDSの変化量と相関を認めなかったが、YSRではGHD群において総得点(r=-0.516)、内向尺度(r=-0.383)、不安抑うつ(r=-0.321)、思考の問題(r=-0.355)、注意の問題(r=-0.509)と身長SDSの変化量との間に負の相関を認めた。
【考察】
本試験により、親が評価した子供のQOLと子供自身が評価したQOLに違いがある事が示された。成長促進効果の相関については、GHD群のみYSRと成長促進効果との間に相関を認めており、GH治療を受けた子供自身の評価では、低身長の改善がQOLの改善に繋がると推測される。一方、GH治療を受けていないISS群の子供においても主治医が継続してフォローし親に対するケアが十分になされた結果、親に安心感を持たせCBCLスコアの減少に反映されたと推測される。