学術活動
No.3 「韓国の成長ホルモンをとりまく事情」
10月27日・28日と韓国の大韓成長医学会に招待され、韓日国際成長学会にて特別講演「Growth Promoting Treatment in Short Children in Japan(日本における低身長小児の成長促進治療)」の特別講演を行ってきました。内容は、すでに学会・シンポジウムで話したものが多く、同様の内容がホームページにも掲載されているので、省略します。
今回、韓国の子どもの状況についていろいろ聞いたことをご紹介したいと思います。現在韓国の平均成人身長は、男子173cm、女子163cmと日本より高く、子どもの背を高くしたいという親の願望が非常に強くなっているそうです。そのため成長クリニックが多数できて、特発性低身長に成長ホルモン治療が乱用されたり、漢方医がいろいろな漢方を処方したりして、混乱しているとのことでした。
その一方で、小学校で肥満の割合がどんどん増加し、15%以上に上昇してきて、国を挙げて取り組み始めたそうです。それと同時に女子の思春期早発症が増えてきており、その点に関して先月、韓国のテレビ局から私の方に取材がありました。日本では、思春期早発症は増えていないので、韓国ではまだsecular trend(成長促進現象)が進んでいるのではないかと答えておきましたが、そのインタビューが、先週韓国で放映されたそうです。女子の思春期早発症が増えたせいか、女子の成人身長が、0.6cmぐらい低くなったともいっていました。
日本は、成長ホルモンを国内では製造しておらず、全部輸入に頼っているためもあって、成長ホルモンの価格が世界で1番高くなっています。韓国国内では、4つの会社が成長ホルモンを製造しており、すでに成人ではlong-acting(週に1回注射)の成長ホルモンが認められているときいております。しかし、成人のほうでもアンチ・エイジング(抗老化)治療として、自費で使われている例が多くなっているそうです。アンチ・エイジングは、欧米でも使われているようですが、治療効果があるというエビデンスがないのが現状です。
韓国では、成長ホルモンが日本より安いせいか、エビデンスもなくおとなに対してもこどもに対しても乱用気味であるというのが、私の感じた率直な印象でした。