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No.1  「9月8日午後から12日まで、シンポジウムおよび学会」


2007/10/17

  9月8日午後から12日まで、シンポジウムおよび学会のために休診致しました。この間、4日間毎日違う演題で4つの英語での演題発表があり、さすがに消耗しました。
 

■「KIGS National Conference」

 
 9月8日に開かれた、「KIGS National Conference」で、ドイツのRanke教授とKIGS(Pfizer International Growth Study)データベースの解析を行い、Ranke教授は「成長ホルモン分泌不全性低身長症:日本と欧米の診断の違い」、私は「成長ホルモン治療に対する欧米人と日本人の反応性の違い」という題で発表しました。KIGSは、ファイザー社の成長ホルモン ジェノトロピンの市販後調査によるデータベースで、全世界から58,900例のデータが蓄積され、日本はその中の18%を占めています。KIGSは1998年に始められ、今年の6月にストックホルムで「KIGS 20周年記念シンポジウム」が開かれ、私も招待されて特別講演「Puberty(思春期)」をおこなってきました。Ranke教授は、KIGSを最初から指導してきた小児内分泌医で、日本も1999年よりKIGSに参加しており、私と昔からの友人です。Ranke教授は、約20年前に私と日比先生と3人で行った鼎談の写真をスライドで紹介してくれました(写真)。
 KIGSに登録されているデータの中で、4年以上GH治療を行い成人身長に達した1,665名の欧米人と297名の日本人の特発性成長ホルモン分泌不全性低身長症のGH治療のデータを解析しました。1年目の成長率は欧米人、日本人それぞれ男性8.8cm/年、7.7cm/年、女性9.2cm/年、7.3cm/年と欧米人のほうが大きく、成人身長も男性168.7cm(-1.20SD)、161.8 cm(-1.55SD)、女性156.0 cm(-1.32SD)、147.8cm(-1.94SD)と欧米人のほうが有意に高身長でした。身長SDスコアの改善率も男性2.05 SD、1.78SD 、女性2.36SD、1.42SDと欧米人の方が有意に改善していました。欧米人のほうが、治療開始年齢が日本人より1年早く、治療量も日本人よりも多いという条件はありますが、やはり日本人の方が、欧米人よりもGH治療に対する反応性が悪いことを示唆するデータでした。
 

■「XI International Congress of Auxology(第11回国際成長学会)」

 
 9月10日~12日は、私が事務局長を務めた「XI International Congress of Auxology(第11回国際成長学会)」が、東京の都市センターホテルで開催されました。10日のサテライト・シンポジウム「低身長児にたいする成長促進治療」で、「成長ホルモン以外の成長促進治療」の講演を行いました。成長科学協会の成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)データベースの解析では、男子の41%が成人身長160cmに達しておらず、女子の64%が成人身長150cmに達していませんでした。国立小児病院/国立成育医療センターの内分泌代謝科で治療したGHDの解析では、思春期開始時の身長が成人身長に重要であることがわかりました。すなわち、GH治療をしている男子で、135cm以上で思春期に入ったひとは、89%(17/19)成人身長が160cmを越えるのに対し、135cm未満で思春期に入ったひとは64%(9/14)が160cmに達しないこと、女子では132.5cm以上で思春期に入ったひとは、82%(9/11)成人身長が150cmを越えるのに対し、132.5cm未満で思春期に入ったひとは86%(19/22)が150cmに達しないことが、明らかになりました(図1(a)(b))。そこで135cm未満で思春期に入った40人の男子と132.5cm未満で思春期に入った女子14人のGHDに対して、GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)アナログ治療を男子平均4.3年、女子平均4年併用しました。その結果、男子で成人身長160cm以上に達した人は32人(80%)、女子で150cm以上に達した人は10人(71%)で、それぞれGH治療だけの36%、14%より有意に改善しました(図2(a)(b))。GnRHアナログの併用は、思春期の時期を延長し、成人身長を改善しますが、長期の治療期間が必要で、その間の思春期が成熟しないことの心理社会的問題、骨密度が上昇しないことなど、よく説明し納得した上で治療を開始する必要があります。
 

■特別講演「低身長児に対する成長促進治療:日本の現状」

 
 11日の特別講演「低身長児に対する成長促進治療:日本の現状」では、現在のGHDに対する成長ホルモン治療はまだ確立した治療ではなく、特に治療量が少ないことが問題であることを指摘しました。また、ターナー症候群においては、治療開始年齢、性ホルモン補充開始年齢が早くなり、また性ホルモン補充法も少量から始める方法が行われるなど、治療法の改善が見られ、成人身長の平均も150cmに近づきつつあることを報告しました。国立小児病院/国立成育医療センター内分泌代謝科のGH治療症例で、軟骨無形成症と軟骨低形成症の治療効果を比較し、低形成症ではかなりの治療効果が見られますが、無形成症での治療効果が少ないことを明らかにしました。プラダー・ウィリ症候群では、GH治療により身長改善・代謝面の改善が報告されていますが、日本を含めGH治療中に20例以上の突然死が報告されております。現在では、高度肥満症例、呼吸障害が認められる症例では、GH治療が禁忌とされています。しかし、乳幼児期の筋緊張低下には著効を示す症例もありました。
 

■骨年齢自動読影装置による測定法BoneXpertデータ発表

 
 12日は、デンマークで開発された骨年齢自動読影装置による測定法BoneXpertを、開発したDr.Thodberg、東邦大学佐藤真理先生、東北大学佐藤亨至先生らと共同で、日本人小児に応用したデータを発表しました。BoneXpertと佐藤真理先生の日本人標準TW2法の読影値はよく一致し、accuracyは0.67歳、preecisionは0.19歳でした。BoneXpertは、ヒトの読影と違い、同じフィルムなら同じ骨年齢を返してくるので、客観性が高く、早く臨床の場で使えるようになることを期待しています。

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