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小槌
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No.8  「日本小児内分泌学会報告」


2008/10/7
 10月1日から4日まで、米子で第42回日本小児内分泌学会があり、以下の5つの発表を行ってきました。

イブニングセミナー「ノルディトロピン治療による成長促進作用と代謝作用」
ランチョンセミナー「ターナー症候群GH治療共同研究(TRC)の7年間の治療経験」
ポスターセッション「CBCLを用いたGHD及びISS小児のQOL評価」
ポスターセッション「低身長児の思春期における成人身長の予測法(Growth Potential II 法)」
ポスターセッション「低身長男子における蛋白同化ホルモンmetenolone acetate (primobolan) の単独投与の成長促進効果」
そのうちの2つについて、内容を紹介します。
 

低身長児の思春期における成人身長の予測法(Growth Potential II 法)

 
たなか成長クリニック1、国立成育医療センター内分泌代謝科2、東邦大学医療センター3 
田中敏章12、内木康博2、堀川玲子2、佐藤真理3

【目的】思春期に入った低身長を主訴とした小児において、成人身長を予測する新しいGrowth Potential法(Growth Potential II 法)を作成する。

【対象と方法】低身長を主訴とした男児25名、女児26名を、無治療で成人身長まで経過観察した。骨年齢は、日本人標準TW2法で測定した。思春期開始時の平均年齢、平均身長、平均身長SDSは、男女それぞれ、12.5歳、135.8cm、-2.14SD、11.22歳、129.4cm、-2.31SDだった。平均成人身長は、男児161.8cm(-1.54SD)、女児147.9cm(-1.99SD)だった。男児のべ116回、女児のべ107回における診察データを、Growth Potential(GP:その時点から成人身長までの伸び)を従属変数、年齢、身長、体重、骨年齢、思春期開始時期の年齢、身長を独立変数として、重回帰分析を行った。

【結果】思春期におけるGrowth Potentialを、次の式で予測した。
男児:GP=61.074-0.373x(暦年齢)-0.712x(TW2法骨年齢)-0.726x(身長)-0.099x(体重)+0.024x(思春期開始年齢)+0.575x(思春期開始身長)
女児:GP=45.573+0.833x(暦年齢)-1.83x(TW2法骨年齢)-0.496x(身長)-0.118x(体重)-1.359x(思春期開始年齢)+0.486x(思春期開始身長)
男児の重回帰式のGPのR2は0.975、女児のR2は0.872と、男子の法が優れていた。評価時点の身長に、この予測GPを加えることにより、予測成人身長が算出できる。思春期開始時および1年以内の男児34回、女子37回の診療時のデータで、男児の(予測成人身長-実測成人身長)の範囲は-2.8cm~2.7cm、絶対値の平均は1.0cm、女児の範囲は-3.6cm~3.6cm、絶対値の平均は2.0cmであった(図1,2)。
同じデータを、Growth Potential I法で評価した場合、男児の(予測成人身長-実測成人身長)の範囲は-8.0cm~14.5cm、絶対値の平均は3.2cm、女児の範囲は-9.0cm~8.0cm、絶対値の平均は3.4cmであった。
思春期開始時が判らないときは、次式を用いられるが、それぞれR2は男児0.907、女児0.759と精度が低下した。
男児:GP=103.121-0.167x(暦年齢)-2.2x(TW2法骨年齢)-0.364x(身長)-0.120x(体重)
女児:GP=72.544+0.458x(暦年齢)-2.406x(TW2法骨年齢)-0.276x(身長)-0.079x(体重)

【結論】無治療時の診療データを用いて、思春期に成人身長を予測するGrowth Potential II法を作成した。Growth Potential I法の骨年齢だけの予測よりも、他の臨床指標も用いて精度がよい予測式が作成できた。他の低身長児での評価が、期待される。
 

低身長男子における蛋白同化ホルモンmetenolone acetate (primobolan) の単独投与の成長促進効果

 
たなか成長クリニック1、国立成育医療センター内分泌代謝科2、東邦大学医療センター3 
田中 敏章1,2、林 美慧2、佐藤 真理3、内木 康博2、堀川 玲子2

【目的】低身長男子において、蛋白同化ホルモンmetenolone acetate (primobolan)の単独投与による、成人身長の改善の効果について検討した。

【対象と方法】低身長思春期発来、または思春期成長率不良を主訴に受診した低身長男子16名に、primobolan を単独投与した。各症例において、思春期開始時、投与開始時、投与終了時、最終受診した時点において、Growth Potential II法によって予測成人身長 (PAH) を評価した。最終受診した時点に、16名うちの9名はすてに成人身長或はほぼ成人身長に達していた(BA>15 y)。[最終受診時PAH-投与開始時のPAH]を治療効果とし、[最終受診時PAH-思春期開始時]を思春期の伸びとした。

【成績】思春期開始時の年齢は 12.30±0.55歳 (11.17~13.08)で、身長は 136.3±4.6 cm (125.7-144.1)であった。投与開始時の年齢は13.07±0.88歳 (11.58~14.5)で、 身長は140.6±5.3 cm (133.3~150.6) で、骨年齢は 12.01±1.12 歳 (10.3-14.5)で、PAHは 161.2±3.4 cm (153.7~168.2)であった。 治療は思春期開始後 0.77±0.78年 (0~2.58) に開始され、治療期間は 1.87±0.81年 (0.83~3.33)であった。 最終受診した時点のPAHは 163.2±4.2 cm (154.8~172.5)であったので、 治療効果は 2.0±1.8 cm. ( P<0.001 )であった(図3)。3cm以上改善したのは5名、低下したのが1名であった。治療効果は、治療開始年齢と、有意な正の相関(r=0.532, p<0.05)を示した。
 

【結論】Primobolanの単独投与は、成長率の改善には効果が認められるが、成長身長の改善は、平均2cmであった。 我々のデータから、低身長男子において、思春期の後期に、蛋白同化ホルモン投与するのが効果的と考えられた。投与量、治療期間などの検討により、よりよい治療効果が期待できる。
 
図1.Growth Potential II法による低身長男子の予測成人身長と実測成人身長
グラフ1

図2.Growth Potential II法による低身長女子の予測成人身長と実測成人身長
グラフ2

図3.プリモボランによる治療効果
グラフ3
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