学術活動
No.32 当クリニックが中心となった共同研究が国際誌に掲載されました
低身長診療を行っている施設(低身長外来研究会)で行った共同研究が、国際誌Hormone Research in Paediatricsに掲載されました。
昔から、成長ホルモン分泌不全性低身長症の発症の男女比は、約2:1で男子が多いといわれてきました。しかし、本研究は、その男女比は、外来を受診する男女比と同じなので、実際の発症率ではないことを明らかにしました。
Chuusinntonatta 要旨を以下にお示しします。
The Boy:Girl Ratio of Children diagnosed with Growth Hormone Deficiency-Induced Short Stature Is Associated with the Boy:Girl Ratio of Children Visiting Short Stature Clinics
成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断された小児の男女比は、低身長外来を受診した低身長児の男女比に規定される
田中敏章1、曽根田 瞬1、佐藤直子1,2、岸 健太郎1,3、野田雅裕1,4、小笠原敦子1,5、野瀬 宰6、仲野由希子6、木下英一7、望月貴博8、今田 進9、村下眞理10、谷澤隆邦11、野末裕紀12、徳田正邦13、窪田和興14、K荒木久美子15、北中幸子16、猪股弘明17、宮城仲健18、石津 桂19、宮河真一郎20
1. たなか成長クリニック 2. 大波クリニック 3. たちばな台クリニック 4. 公立昭和病院小児科
5. 茨城県立こども病院 6. 野瀬クリニック 7. きのしたこどもクリニック 8. 希望の森 成長発達クリニック 9. こんだこども医院 10. むらしたこどもクリニック 11. たにざわこどもクリック 12. つくばキッズクリニック 13. 徳田こどもクリニック 14. クボタ小児科 15. 秋山成長クリニック 16. きたなかこども成長クリニック 17. いのまたこどもクリニック 18 みやぎ小児科クリニック 19. 北円山 杜のこどもクリニック 20. みやがわ小児科医院
Hormone Research in Paediatrics 2021;94:211-218 DOI:10.1159/000518995
要旨
背景:成長ホルモン(GH)治療されている成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)は、男子が女子の約2倍と報告されている。その男女差が、実際の発症率の差であるかどうかの検討はされていない。
目的:GHDの男子優位は、低身長外来に受診する時に、既にselectionされている可能性を検討した。
対象及び方法:対象は低身長小児を治療している17施設において、2015年から2020年までに初診で受診した低身長小児(身長SDスコア -2 SD以下)の0歳から17歳までの小児3902名。そのうち、GH分泌刺激試験を受けた割合、最終的にGHDと診断され割合を、男女で比較した。GHDの診断は、2種類の分泌刺激試験で、いずれもGH頂値が6ng/ml以下(GHRP-2負荷試験では、16ng/ml以下)とした。
結果:受診した低身長小児は、男子2390名(61.3%)、女子1512名(38.7%)、男女比 1.58:1であった。年齢群別の男女比は、9~11歳群では1.05:1だが、12~14歳では2.38:1、15~17歳では8.79:1と、男子が多かった。低身長小児の平均身長SDスコアは、男子 -2.47±0.43 SD、女子 -2.52±0.49 SDで、女子が有意に低かった(p<0.0001)。GH分泌刺激試験を受けた低身長小児は、男子1092名(45.7%)、女子753名(49.8%)で、GH分泌刺激試験を受けた割合に、男女の差はなかった。GH分泌刺激試験を受けた低身長小児のうち、GHDと診断されたのは、男子240名(22.0%)、女子151名(20.1%)で、GHD と診断された割合に、男女差はなかった。GHDの男女比は、1.59:1であった。
結論:低身長小児の男女比1.58:1は、GHDと診断された児の男女比1.59:1と有意差がなく、途中のGH分泌刺激試験を受けた割合、GH分泌刺激試験でGHDと診断された割合も男女に差がないため、GHDの男子優位は発症率の差ではなく、低身長外来を受診することにおける男女の割合が、GHDの男子優位の診断を規定していると考えられた。この男女の割合の差は、低身長の親の男女の身長に対する意識の差だけではなく、成人身長に達する年齢が、男子が高いということも、その原因の一因と考えられた。