学術活動
No.19 抄録 GHRP-2 2014
Increased secretion of endogenous GH after treatment with an intranasal GH-releasing peptide-2 spray does not promote growth in short children with GH deficiency
Toshiaki Tanaka, Yukihiro Hasegawa, Susumu Yokoya, Yoshikazu Nishi
Clinical Pediatric Endocrinology 23:107-114,2014
Growth hormone-releasing peptide-2点鼻による内因性成長ホルモン分泌増加は、成長ホルモン分泌不全性低身長症児の成長を促進しない
田中敏章1、長谷川行洋2、横谷 進3、西 美和4
1. たなか成長クリニック 2. 東京都立小児医療センター内分泌代謝科 3. 国立成育医療研究センター生体防御内科部 4. 広島原爆赤十字病院小児科
要旨
強力なGH(Growth hormone: 成長ホルモン)分泌刺激剤であるGHRP(Growth hormone ?releasing peptide)-2の点鼻による内因性GHの分泌促進により、成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)の成長が促進されるかを検討した。
対象は、身長が-2SD以下でGH分泌刺激試験により診断された成長ホルモン分泌不全性低身長症のうち、GHRP-2の事前点鼻により血中GH濃度が9ng/mlまで上昇する前思春期の症例126例(男子81例、女子45例)。対象を二重盲検法によりプラセーボ群44例(P群:男子30名、女子14名)、GHRP-2低用量群41例(L群:男子25名、女子16名)、GHRP-2高用量群41例(H群:男子26名、女子15名)の3群に分けた。体重20kg未満は偽薬(P群)、GHRP-2 50μg(L群)、GHRP-2 100μg(H群)を、体重20kg以上は偽薬(P群)、GHRP-2 100μg(L群)、GHRP-2 200μg(H群)を1日2回(朝、夕)投与し、48週継続した。P群、L群、H群の治療開始時の年齢、身長SDスコアは、P群7.5歳、-2.26SD、L群7.3歳、-2.38SD、H群7.5歳、-2.27SDと、3群に有意差はなかった。
48週継続できた症例は、P群、L群、H群それぞれ44例、40例、40例だった。48週後の平均成長速度、平均身長SDスコアは、P群、L群、H群と48週間の身長SDスコアの変化もそれぞれ平均0.07SD、0.03SD、0.02SDと有意差がなかった。開始時および48週の血中IGF-I値も3群間に有意差がなかった。
GHDにおいて、GHRP-2による内因性GH分泌の増加は、成長を促進しないことが明らかになった。このことは、本症に成長促進をもたらすGH治療が、基本的には薬理作用であることをあきらかにするとともに、インターネットなどで氾濫するGH分泌促進作用をもつと宣伝されているサプリメント・薬剤などに、警告を発するものである。