学術活動
No.17 抄録 GST+PB 2012
Combined treatment with gonadotropin-releasing hormone analog and anabolic steroid hormone increased pubertal height gain and adult height in boys with early puberty for height
Toshiaki Tanaka, Yasuhiro Naiki, Reiko Horikawa
Clinical Pediatric Endocrinology 21:35-43,2012
低身長思春期発来児にたいする蛋白同化ホルモン・性腺抑制併用療法の有効性
田中敏章12、内木康博2、堀川玲子2
1.たなか成長クリニック
2.国立成育医療センター内分泌代謝科
【目的】
低身長で思春期に入った小児(低身長思春期発来児)の成人身長は、低く終わることが知られている。低身長思春期発来児にたいし、蛋白同化ホルモンと性腺抑制療法を併用して思春期の伸びを大きくし、成人身長の改善を試みた。
【対象】
135cm以下で思春期に入った男子を低身長思春期発来と定義した。思春期開始時が不明な児は、成長曲線のスパート開始時を思春期開始時とした。無治療で経過を見た低身長思春期発来男子30名、および蛋白同化ホルモン・性腺抑制併用療法を行った低身長思春期発来男子22名。無治療児の思春期開始年齢・身長は、12.1±0.7歳、130.5±3.2cm、併用療法児はそれぞれ、11.0±0.9cm、130.6±4.2cmであった。性腺抑制療法はリュープリンを用い、LHを0.5mIU/ml以下にするように治療量を調節した。開始年齢、終了年齢の平均は12.3歳、16.3歳で、治療期間は4.1±1.2年であった。抑制療法開始時、終了時の平均身長はそれぞれ140.6cm、159.6cmであった。蛋白同化ホルモンは、ウィンストロール(2~4mg)、プリモボラン(5~15mg)を就寝前に経口投与した。蛋白同化ホルモンの開始年齢、終了年齢の平均は13.3歳、16.6歳で、平均投与期間は3.4年であった。
【結果】
無治療群の平均成人身長は、159.6±2.0cmで、思春期の伸び(思春期開始時より成人身長までの伸び)は、26.8±2.3cmであった。併用療法群は、リュープリン終了時の身長159.6±2.9cm、成人身長(Near adult height含む)は164.6±3.6cmで、無治療群より有意に(p<0.0001)高かった。思春期の伸びも34.0±5.0cmと、無治療群より有意に(p<0.0001)大きく、リュープリン終了後も、平均5cmの伸びが見られた。
【考案】
併用療法を行うことで、思春期の伸びが大きくなり、成人身長の改善が認められた。蛋白同化ホルモンの副作用として肝機能障害がまれに認められたが、作用により外性器は成熟し、心理社会的問題も認められなかった。