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学術活動

No.2  ”Forum on Growth Hormone Research, 2007” (成長ホルモン研究フォーラム 2007)


2007/10/23

■”Forum on Growth Hormone Research, 2007” (成長ホルモン研究フォーラム 2007)

 
 10月13日に東京で開かれた”Forum on Growth Hormone Research, 2007” (成長ホルモン研究フォーラム 2007)(大日本住友製薬、日本ケミカルリサーチ共催)で、基調講演「成長ホルモン治療:過去・現在・未来」を行いました。
 我が国の成長ホルモン(GH)治療は、1975年に当時住友製薬がスウェーデンのカビ社から輸入販売していたコルポルモンが、下垂体性こびと症(現在の成長ホルモン分泌不全性低身長症)に認可されたのが始まりでした。当初のGHは、ヒト下垂体から抽出していたGH(p-hGH)だったため供給量が足りず、1977年に設立された成長科学協会の下垂体治療委員会に申請して、治療を行っていました。Waiting listが200人もあったりしたため、臨床現場では1人にGHが供給されると、それを半分にして2人に投与していたこともありました。診断基準は現在と同様に、間脳下垂体障害調査研究班が作っていましたが、1975年の診断基準は、「身長-2.5SD以下、2つ以上のGH分泌茂樹試験のいづれのGH頂値も5ng/ml以下」という現在の重症型で、重度の低身長が認められた人だけでした。
 診断名は「下垂体性こびと症」から「下垂体性小人症」「成長ホルモン分泌不全性低身長症(1993年)」と変わり、身長SDスコアも-2SD以下となり、GH分泌刺激試験のGH頂値も「2つ以上の分泌刺激試験で7ng/ml以下」「10ng/ml以下」と緩和され、GH測定キットの標準化に伴って「遺伝子組換えhGH(r-hGH)を標準品としたときは6ng/ml以下」と変わってきております。
 成人身長に対する治療効果を、成長科学協会のデータベースによる日比先生の論文(1)と私の論文(2)とで比較してみました。1986年以前に治療開始されたp-hGH前期の時代、1986~1989年に治療開始されたp-hGH後期の時代、1990年以降に治療開始されたr-hGHの3つの時代に分けて比較しました。成長ホルモン分泌不全性低身長症は、GHだけの分泌が障害されている「単独GH分泌不全症(IGHD: isolated GH deficiency)」と、他の下垂体ホルモン、特に性腺刺激ホルモンの分泌も障害されている「多発下垂体ホルモン分泌不全症(MPHD: multiple pituitary hormone deficiency)」に分けられます。単独GH分泌不全症のGH治療後の平均成人身長は、時代と共に男子では151.8cm、157.2cm、160,5cm、女子では141.4cm、145.3cm、147.2cmと改善してきました。しかし、多発下垂体ホルモン分泌不全症の平均成人身長は、時代と共に男子163.7cm、162,4cm、161.2cm、女子151.0cm、148.0cm、147.2cmと若干低下しています。p-hGHの時代の治療開始時の身長SDスコアは男女とも-3.7~-4.5SDと非常に低く、r-hGHの時代になって-2.1~-2.9SDと高くなってきています。多発下垂体ホルモン分泌不全症のp-hGHの時代では、性ホルモン補充療法の平均開始年齢を男子前期19.8歳、後期16.9歳、女子それぞれ18.5歳、14.5歳と遅らせることによって、成人身長の改善が図られていました。R-hGHの時代では、性ホルモン補充開始の平均年齢は、男女それぞれ14.9歳、13.9歳と早くなることにより、QOLの改善が図られたと考えられます。
 単独GH分泌不全症の成人身長が改善した要因としては、注射回数がp-hGHの2~3回/週から6~7回/週に増えたこと、治療量が十分使えるようになったこと、r-hGHの効力が高いことなどがあげられますが、一番大きな要因は治療開始時の身長SDスコアが高くなったことです。すなわち、低身長の程度がひどくならないうちに治療を開始すると、成人身長も高くなるということです。
 しかし、r-hGHで治療された人も、男子の38%、女子の46.2%の人は、正常成人身長に達しておらず、まだ満足な治療とはいえません。その大きな原因は、我が国で認められている治療量が世界でも一番少ないことにあると思います。より高い治療量が使えない現状では、性腺抑制療法や蛋白同化ホルモンを併用するなどの治療法が工夫されてきています。

当院の院長と副院長を紹介します。

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